キャッシュフロー計算書(C/F)の読み方
公開日: 2025年11月26日 / カテゴリ: 基礎知識
損益計算書(P/L)で利益が出ていても、手元の現金がなければ企業は倒産してしまいます。キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement、C/F)は、企業が一定期間にわたってどのように現金を獲得し、使ったかを示す書類であり、企業の資金繰りの実態や安全性を判断する上で非常に重要です。C/Fは、現金の流れを3つの活動に分けて示します。
C/Fの構造:3つの活動
キャッシュフロー(CF)は、企業の経済活動を以下の3つの区分に分けて記録します。
1. 営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)
企業が本業で稼いだ現金の流れを示します。商品の販売による収入や、仕入れ・経費の支払いによる支出がここに計上されます。
- プラス:本業が順調であり、現金を十分に稼ぎ出せている状態を示します。これがC/Fの中で最も重要です。
- マイナス:本業からの現金の流出が続いており、資金繰りが苦しい状態を示します。P/Lで利益が出ていても営業CFがマイナスの場合、黒字倒産のリスクがあります。
2. 投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)
将来の成長のために行った投資(または資産の売却)による現金の流れを示します。工場や機械の購入、他社株の購入・売却などが含まれます。
- マイナス:積極的に設備投資やM&Aを行っている状態を示し、将来の成長に意欲的であると評価できます(成長企業の特徴)。
- プラス:保有している固定資産や有価証券を売却して現金を確保している状態を示します。企業の縮小や、資金繰りの悪化による売却の可能性があります。
3. 財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)
資金の調達と返済、そして株主への還元に関する現金の流れを示します。銀行からの借入や返済、株式の発行、配当金の支払いなどが含まれます。
財務CFの判断基準
| 項目 | プラスの場合 | マイナスの場合 |
|---|---|---|
| 借入 | 資金調達(借金が増加) | 借入金の返済(借金が減少) |
| 増資 | 新規株式発行(資本が増加) | 自社株買い(資本を還元) |
| 配当 | ? | 配当金の支払い(株主還元) |
成長途中の企業は借入が増えるためプラスになりやすく、成熟した安定企業は借入返済や株主還元が多くマイナスになる傾向があります。
C/F分析の重要性:利益と現金のズレ
損益計算書(P/L)は会計上のルールに基づき収益を計上するため、「売掛金(まだ入金されていないお金)」も利益に含めます。これに対しC/Fは実際に動いた現金のみを記録します。
理想的なキャッシュフローのパターン
投資家にとって最も健全で優良な企業を示すパターンは以下の通りです。
| キャッシュフロー | 符号 | 意味合い |
|---|---|---|
| 営業CF | プラス (+) | 本業で現金を稼いでいる |
| 投資CF | マイナス (-) | 将来のために積極的な投資を行っている |
| 財務CF | マイナス (-) | 借金を減らし、配当や自社株買いで株主に還元している |
全てのCFがマイナスの場合は、本業で稼げず、資産も売却し、借金も返済している危険な状態です。一方、すべてのCFがプラス(特に財務CFがプラス)の場合は、無理な借入を続けている可能性があります。