ネット証券で株式を買う流れと知っておきたい基本知識
公開日: 2025年11月28日 / カテゴリ: 基礎知識
ネット証券口座を開設した後、実際に株式を購入する際の手順と、注文時に知っておきたい基本用語を解説します。実際の取引画面は証券会社によって異なりますが、基本的な流れは共通しています。
株式購入の基本手順(注文の流れ)
多くのネット証券における株式の購入は、以下の5つのステップで進行します。
1. 銘柄の検索
購入したい銘柄を特定します。検索には以下の情報が使えます。
- 証券コード(日本株): 4桁の数字(例: トヨタ自動車 7203)
- ティッカーシンボル(米株): 英語の略称(例: Apple AAPL)
- 会社名: 正式名称または通称
2. 注文方法の選択(指値と成行)
どの価格で株を買いたいかを指定します。
| 注文方法 | 価格の指定 | 特徴 |
|---|---|---|
| 指値(さしね) | 希望の価格を指定 | 希望価格以下で買える。ただし、価格が合わなければ約定(売買成立)しない可能性がある。 |
| 成行(なりゆき) | 価格を指定しない | その時点での市場価格で優先的に約定する。確実に買えるが、予想外の高値で成立するリスクもある。 |
3. 口座の選択
どの口座種別で購入するかを選びます。税制優遇の有無が最も重要です。
- NISA口座: 運用益が非課税になる優遇口座。(年間投資上限あり)
- 特定口座(源泉徴収あり): 損益計算や納税を証券会社が代行してくれる口座。
- 一般口座: 自分で損益計算と確定申告を行う必要がある口座。
4. 注文の実行と成立・不成立
注文内容を確認し、発注ボタンを押します。注文はすぐに市場に出されますが、指値注文の場合は、指定した価格に達しない場合、その取引時間内または指定した期間内は不成立(未約定)となり、注文が自動的に失効します。
出来高とは、特定の期間にその銘柄の株式が実際に売買された量を指します。この出来高が少ない銘柄(流動性が低い銘柄)を取引する場合、主に以下のリスクが高まります。
-
1.注文が不成立になりやすい(約定力の低下)
出来高が少ないということは、市場にその株を買いたい人(買い手)と売りたい人(売り手)がほとんどいない状態を意味します。
指値注文の場合、希望する価格で売買に応じてくれる相手がいなければ、注文はいつまで経っても約定(売買成立)しません。成行注文の場合でも、取引相手が極端に少ないため、提示されている価格が適正水準から大きく乖離していても、その価格で成立してしまうリスクがあります。 -
2.スプレッドが広がりやすい
流動性が低い銘柄では、「買いたい価格(買い気配)」と「売りたい価格(売り気配)」の差(スプレッド)が広くなります。スプレッドが広いと、投資家は希望価格よりも不利な価格でしか取引を成立させることができず、実質的な取引コストが高くなります。 -
3.株価が急変動しやすい
大口投資家の一つの注文だけで需給バランスが一気に崩れ、取引相手がいないために、株価が大きく、不規則に急騰または急落することがあります。これは、価格の安定性(ボラティリティ)の観点からもリスクが高い状態と言えます。
株式の売買単位と銘柄の種類
売買単位の違い(単元株制度)
日本株は、単元株制度により、個別株は基本的に100株単位(単元)での購入が義務付けられています。そのため、単元未満株を扱わない証券会社で個別株を買う場合、1株あたりの株価 × 100株分の資金が必要になります。
一方、米国株をはじめとする海外の市場では、一般的に1株から購入できます。また、日本株でも、ETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)は、銘柄によって1口や10口単位など、100株単位ではない取引が可能です。
主な銘柄の種類と市場
- 個別株: トヨタやAppleなど、特定の企業が発行する株式。
- ETF(上場投資信託): 日経平均やS&P500などの指数に連動するように設計されたファンドで、株式のように市場で売買できる商品。
- REIT(不動産投資信託): 不動産を投資対象とし、その賃貸収入などから得られた利益を分配する商品。
主な市場の種類も投資先を選ぶ上で重要です。
| 国 | 主な市場 | 概要 |
|---|---|---|
| 日本 | 東証プライム、スタンダード、グロース | 旧東証一部がプライム、旧東証二部やジャスダックの一部がスタンダードに再編。新興市場はグロース。地方の証券取引所は取引量が少ない。 |
| アメリカ | NYSE(ニューヨーク証券取引所)、NASDAQ(ナスダック) | NYSEは伝統的な大企業が中心。NASDAQはAppleやGoogleなどハイテク・成長企業が多い。 |
取引時間、手数料、為替の基本
各国の取引時間(日本時間表記)
| 市場 | 取引時間(日本時間) | 備考 |
|---|---|---|
| 日本株(東証) | 9:00~11:30(前場)、12:30~15:30(後場) | 土日祝日および年末年始は休場。 |
| 米国株(NYSE/NASDAQ) | 23:30~翌6:00 | サマータイム(3月第2日曜~11月第1日曜)適用期間は22:30~翌5:00となります。 |
PTS夜間取引:東京証券取引所(東証)の取引時間外に、私設の取引システム(PTS)を通じて行われる株式取引のことで、夜間(概ね17時~23時59分頃まで)も取引が可能です。PTSでの取引価格は、翌日の東証の取引に影響を与えることはありますが、東証と比べて出来高が圧倒的に少ないため、ここで成立した価格や出来高はあくまで参考程度にとどめるべきです。
米国株式市場の主な休場日(2025年)
米国株市場は、以下の米国の祝日に原則として休場となります。正確な情報は毎年変動する可能性があるため、必ず証券会社の情報を確認してください。
| 祝日名 | 日付(2025年) | 備考 |
|---|---|---|
| 元日 (New Year's Day) | 1月1日 (水) | |
| キング牧師誕生日 (MLK Day) | 1月20日 (月) | 1月の第3月曜日 |
| ワシントン誕生日 (Presidents' Day) | 2月17日 (月) | 2月の第3月曜日 |
| 聖金曜日 (Good Friday) | 4月18日 (金) | 復活祭直前の金曜日 |
| 戦没将兵追悼記念日 (Memorial Day) | 5月26日 (月) | 5月の最終月曜日 |
| ジューンティーンス (Juneteenth) | 6月19日 (木) | |
| 独立記念日 (Independence Day) | 7月4日 (金) | |
| 労働者の日 (Labor Day) | 9月1日 (月) | 9月の第1月曜日 |
| 感謝祭 (Thanksgiving Day) | 11月27日 (木) | 11月の第4木曜日 |
| クリスマス (Christmas Day) | 12月25日 (木) |
※ 感謝祭の翌日など、一部の日は半日取引(早期閉場)となることがあります。
※ 米国の機関投資家は、多くのファンドの会計年度が9月末で区切られるため、レイバー・デイ(9月の第1月曜日)明けから四半期末に向けたポートフォリオの入れ替えや利益確定の動きが活発化しやすい傾向があります。
手数料と為替の仕組み
株式の売買には、証券会社に対して手数料を支払う必要があります。手数料は証券会社や、取引する銘柄(国内株か海外株か)、取引金額、プラン(1日の約定代金合計か1回ごとなど)によって大きく異なります。
米株購入時の為替
米国株を購入する際は、日本円(JPY)を米ドル(USD)に換える必要があります。方法は主に二つあります。
- 円貨決済: 注文と同時に自動で日本円をドルに替えてもらう方法。
- 外貨決済: あらかじめ自分で証券口座内の外国為替取引(為替取引)を行い、ドルを準備してからそのドルで購入する方法。売却時も同様です。
為替スプレッドの見方
為替取引には必ずスプレッド(買値と売値の差)が発生します。これは金融機関の実質的な利益となります。
顧客が買う価格(TTS) > 銀行間取引価格 > 顧客が売る価格(TTB)
例えば、銀行間取引価格が1ドル=150.00円の時、証券会社が150.25円で売り(TTS)、149.75円で買い取る(TTB)といった差があり、この差(0.50円)が実質的なコストとなります。
為替の取引時間
外国為替市場は土日を除く24時間開いていますが、証券会社が提供する外貨決済のための為替取引は、米株の取引時間(夜間)に限られるなど、証券会社によって制限されていることが多いです。事前に確認しておきましょう。