円と貯金が持つ隠れたリスクと円建て金融商品

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日本円の貯金は「安全」という認識が一般的ですが、実はインフレや機会損失という形で見えないリスクを抱えています。ここでは、円という資産の特性と、学資保険や日本国債など、日本円をベースにした主な金融商品の基礎知識を解説します。


貯金の落とし穴:見えないコストとインフレのリスク

貯金は「日本円」という資産への集中投資

「貯金は安全」「元本保証だから安心」というのは、預けたお金の「額面」が減る心配がないという意味で、最もリスクの低い資産の持ち方です。

しかし、私たちの資産が銀行預金という形で日本円に留まっているとき、それは知らず知らずのうちに「日本円という単一の資産」に集中投資している状態だと考えることができます。

額面は保証されても「価値」は保証されない

貯金は額面が保証されますが、インフレ(物価上昇)が起こるとその実質的な価値は目減りします。

例えば、今100万円で買えるものが、インフレで翌年105万円必要になった場合、貯金は100万円のままですから、「買えるモノの量」が減ってしまいます。額面は減らなくても、生活に必要なものを手に入れるための実質的な購買力は損をしていることになるのです。

【機会損失という名の見えないコスト】

手元に現金を置いていることで、「本来得られたはずの利益」を失っている可能性があり、これを機会損失と呼びます。もしその資金を世界経済の成長に乗せていれば、増えていたはずの成長のチャンスを逃していることになります。将来に向けた資産形成を考えるときには、「額面の安心」だけでなく、「インフレによる実質的な価値の目減り」や「成長の機会を逃すコスト」も視野に入れて、貯金と投資のバランスを考えることが大切です。

預金保険制度(ペイオフ)の保証の範囲

日本の銀行が万が一破綻した場合に、預金者を保護するための制度がペイオフです。しかし、全ての預金が無制限に保証されるわけではありません。

  • 保証の対象となる預金(決済用預金を除く): 1金融機関ごとに預金者一人あたり元本1,000万円までと、その利息等が保護されます。
  • 全額保護される預金: 当座預金や利息のつかない普通預金など、「決済用預金」と指定されたものは全額保護されます。

これは、1,000万円を超える貯金を持つ場合、資産を一つの銀行に集中させていると、万が一の時に全額が戻らないリスクがあることを意味します。この点も、資産を分散させるべき理由の一つです。


主要銀行の普通預金金利比較(2025年11月現在)

現在、多くの銀行では普通預金金利が非常に低く設定されていますが、ネット銀行は特定の条件を満たすことで優遇金利を提供しているのが特徴です。

銀行区分 銀行名 基本の普通預金金利(年利) 優遇金利(条件付き) 備考
ネット銀行 楽天銀行 年0.20%(税引後 年0.159%) 最大 年0.28%(税引後 年0.223%) 楽天証券との連携サービス「マネーブリッジ」設定で優遇金利が適用されます。
ネット銀行 住信SBIネット銀行 0.200% 最大 0.210% SBI証券との連携サービス「SBIハイブリッド預金」利用などで優遇金利が適用されます。
メガバンク 三菱UFJ銀行 年0.2000% なし ---
メガバンク 三井住友銀行 0.200% なし ---
メガバンク みずほ銀行 0.200% なし ---
郵便貯金 ゆうちょ銀行 0.200% なし ---

円の特性を理解する:円キャリートレード

円キャリートレード(Yen Carry Trade)とは

円キャリートレードとは、金利が低い日本円で資金を借り入れ、それを金利が高い米ドルや豪ドルなどの通貨に交換し、その国の債券や資産に投資することで、金利差(スワップポイント)による利益を得ようとする取引戦略です。

リスク:円高への急激な巻き戻り

キャリートレードの最大のリスクは、世界経済が不安になった際に発生します。投資家はリスク回避のため、借りていた円を急いで買い戻し、ポジションを解消しようとします。この「円の買い戻し」が集中すると、市場では一斉に円高が進行し、大きな混乱を招くことがあります。


その他の円建て金融商品と注意点

学資保険(こども保険)

子どもの教育資金を積み立てるための保険商品です。毎月保険料を支払い、満期時(進学時など)に祝金や満期金を受け取ります。

日本国債(個人向け国債)

日本国が発行する債券で、個人投資家向けに販売されています。国が発行体であるため、安全性が非常に高いとされる金融商品です。