損益計算書(P/L)の読み方
公開日: 2025年11月26日 / カテゴリ: 基礎知識
企業の財務状況を読み解く「財務三表」の中で、一定期間の経営成績、つまり「企業がどれだけ稼いだか」を示すのが損益計算書(Profit and Loss Statement、P/L)です。P/Lは、上から順に5つの利益を計算していく構造になっており、企業の収益の質を判断するために不可欠です。
P/Lの構造:5つの利益
損益計算書は、売上から費用を段階的に差し引いていき、最終的な利益を計算する構造になっています。これにより、どの活動でどれだけの利益が出ているかを把握できます。
1. 売上総利益(粗利)
売上総利益 = 売上高 - 売上原価
企業が提供する商品やサービスそのものから得た儲けを示します。これがマイナス(赤字)の場合、商品を仕入れたり製造したりするコストすら回収できていないことを意味します。
2. 営業利益
営業利益 = 売上総利益 - 販売費及び一般管理費(販管費)
企業の本業で稼いだ利益を示します。給与、広告費、家賃などの販管費を引いた後の利益であり、本業の競争力や収益力を測る上で最も重要視されます。営業利益が継続的に伸びている企業は、本業が順調であると判断できます。
3. 経常利益
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
企業が通常の事業活動全体から経常的に(恒常的に)得ている利益を示します。本業以外に、受取利息、配当金などの「営業外の収益・費用」を加味したものです。企業の総合的な収益力を表します。
4. 税引前当期純利益 と 5. 当期純利益
当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失 - 法人税等
当期純利益は、法人税などを差し引いた最終的な純粋な利益です。特別利益や特別損失(例:固定資産売却益/損、災害損失など)という一時的な要因が反映されます。PER(株価収益率)の計算などに使われます。
投資家がP/Lで見るべきポイント
投資家は、P/Lを読む際に「どの利益」に注目するかで、企業のどこを評価しているかが変わります。
- 成長性・競争力: 売上高と営業利益の推移をチェックします。特に、営業利益が前年比で伸び続けている企業は、本業の競争力が強いと評価できます。
- 総合力・安定性: 経常利益をチェックします。経常利益が安定している企業は、本業以外の活動も含めて安定した収益基盤を持っていることを示します。
- 収益の質: 営業利益と経常利益を比較します。この差が大きい場合、本業(営業利益)は振るわないが、投資収益(営業外収益)などでカバーしているといった収益の構造が分かります。
- 一時的な要因: 特別利益/損失をチェックします。特別損失が計上され当期純利益が落ちていても、本業(営業利益)が健全であれば、一時的な悪材料と判断できる場合があります。