ROAとROEは何を教えてくれるのか
公開日: 2025年11月26日 / カテゴリ: 基礎知識
株式投資では、企業の収益力を測ることが非常に重要です。ROA(総資産利益率)とROE(自己資本利益率)は、企業が所有する資産や資本をいかに効率良く使って利益を生み出しているかを示す指標です。これら二つの指標の意味と計算方法、そして「高いから良い」だけではない判断基準を解説します。
ROA(総資産利益率)とは?
ROA(Return On Assets)は、企業が持っているすべての資産(負債+自己資本)に対して、どれだけの利益を上げているかを示す指標です。企業の規模にかかわらず、資産を総合的に活用する効率を測るために使われます。
ROAの計算式
ROA(%)= 当期純利益 ÷ 総資産 × 100
分母の総資産には、借り入れたお金(負債)も含まれます。つまり、ROAは「他社から借りたお金も含め、会社全体でどれだけ効率的に利益を上げているか」を示します。
ROAの基準と解釈
- 一般的に、ROAが高いほど、資産を有効活用して利益を上げている収益性の高い企業と評価されます。
- 業種にもよりますが、5%以上が一つの目安とされることが多いです。
- ROAは、競合他社や同業種の平均と比較することで、その企業の経営効率が優れているかを判断するのに役立ちます。
ROE(自己資本利益率)とは?
ROE(Return On Equity)は、株主から集めた自己資本(純資産)に対して、どれだけの利益を上げているかを示す指標です。これは、株主にとっての投資効率を示す最も重要な指標の一つとされ、株主資本利益率とも呼ばれます。
ROEの計算式
ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
分母の自己資本は、株主からの出資や利益の積み重ねなど、返済不要な純資産のみを指します。
ROEの基準と解釈
- ROEが高いほど、株主資本を効率良く使って利益を上げており、企業価値創造能力が高いと見なされます。
- 日本企業では8%以上が一つの基準とされることが多く、欧米企業ではさらに高い水準が求められる傾向があります。
- ROEは、企業の成長への期待を示す一方で、借金(負債)を増やして自己資本比率を下げた結果、ROEが高く見える場合がある点に注意が必要です。
ROAとROEの使い分け(デュポン分解)
ROAとROEは密接に関連しており、両方を分析することで企業の財務体質や経営戦略を深く理解できます。
両指標の関係性
ROEは、以下の3つの要素に分解して考えることができ、これをデュポン分解と呼びます。
ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
さらに、ROAは「売上高当期純利益率 × 総資産回転率」に等しいため、以下の関係が成り立ちます。
ROE = ROA × 財務レバレッジ
| 指標 | 意味 | 高い理由 |
|---|---|---|
| ROA | 総資産に対する利益効率 | 本業の効率(利益率が高い、または資産回転率が高い)が良い |
| ROE | 自己資本に対する利益効率 | ROAが高いか、財務レバレッジ(負債の利用)が高い |
「高ければ良い、だけではない」理由
ROEが非常に高い場合、それは経営が非常に効率的である可能性を示しますが、上記の分解式から、負債の比率(財務レバレッジ)を極端に高めている結果である可能性も考えられます。
ROEが高くても、借金が多くてROAが低い企業は、財務的に不安定な状態にあると判断できます。安定的な高ROE企業を見つけるためには、ROAとROEの両方を見て、ROA(本業の効率)が高い企業を選ぶことが重要です。